どのような視点でワークトップを選んだら良いか?
皆さんは「どのような観点」でキッチンを選びますか?
ワークトップは実際に永く(最低でも20年,永い人で40年以上)使ってゆくものですので”後悔のない納得したキッチン選び”において「最重要な要素」の一つでもあります。
デザインや性能の違いを把握しておくことで”後悔のないキッチン選び””キッチンリフォーム”をぜひ実現ください。
「満足度の高い」キッチン選びができるようにワークトップ選定事の注意とポイント、最新ワークトップの比較をしました。
*ちょっと長いので、目的の箇所をつまみ読みされたい方は目次をご活用くだされば幸いです。
ワークトップ選定の注意とポイント
以下の点を知ったうえでワークトップ、及びシステムキッチンの選定をすると後で後悔のないキッチン選びができると思います。
”できないこと”を知る
まず多くの方が勘違いしているのは、「どのメーカーでも」好きなワークトップが選べると思っている点です。
基本的なワークトップ「ホワイト系の人造大理石」と「水返のついたステンレストップ」はどのメーカーでも扱っておりますが、多くの方はそこからショールームに足を運んでよりデザイン性の高い各社の出しているワークトップを選定されます。
各社特色のあるワークトップを基軸として、扱うことのできるワークトップを制限しメーカー色を強調しています。
ワークトップの”個性”を知る
ワークトップのデザイン種類には以下のような種類があり、性能はもとより“それぞれの表情”が違います。
恐縮ながら永くキッチンプランニングに向かう中でワークトップは以下のような個性の違いがあると感じています。
【人造大理石】
→ 主張が強すぎずフレンドリーでその場や使い方に寄り添うイメージ。柔らかい空間や親子、温かい調理の場を想起させます。
【ステンレストップ】
→ プロが採用する実用的なイメージは、招かれた客人を当たり前のように丁寧な料理でもてなす含蓄だが無口で知的なイメージを与えると思います。
【セラミックトップ】
→ 硬質で家具のような表情が生活の中にキッチンを落とし込み、さらには「もてなし」の静けさも表現している。 “ひとつ上の大人な印象”。
【クオーツトップ】
→ 少し”突き放した”ような硬質さの一方でキラキラとした粒子感、硬質さ。ステンレスとは異なったプロっぽさを体現している。
キッチンは今やリビングの主役です。
キッチンに対しての認識に変化が起きて、リビングがダイニングに向くようになってきたのとそれに合わせてデザインが進化してきたのがこの10~20年かと思います。
「車」を購入される時と同じように「眺めて美しい」「使って満足度の高い」キッチンにぜひ出会えると僕も嬉しいです。
微妙な違い・性能の差を知る
昔はメラミントップやステンレスのトップで熱いものを置いたときに「天板が浮いてきてしまった!」などのクレームもありましたが、現代ではいづれの商品でも耐久品質は標準規格を満たしております。
その上で微妙な違いを把握し、自分の欲しいデザインと照らし合わせながら選定を探ることが大切かと思います。
ワークトップの機能的な留意点
硬さ
使うグラスや食器のことを考える
例えばセラミックトップは非常に硬質です。天板で包丁を使っても、傷がほとんどつきません。クオーツストーンも同様に硬質です。
逆を返せば”食器側が割れてしまう”ということです。
バカラや大切なグラスのことを考えると「硬さ」という要素でワークトップを図るというのは大切な視点かと思います。
用途に合わせたワークトップ選定の視点を持つ
食器も大事だけれどもセラミックやクオーツストーンの表情が欲しいという方にはトクラスやキッチンハウスで出している独自のワークトップがおすすめかもしれません。
トクラスでは人造大理石に特殊塗装を施しセラミックトップの表情をもった「テノール」というワークトップを、キッチンハウスやグラフテクトでは「メラミン」でできた色柄豊かなワークトップが選択できたりします。
汚れにくさ
多くの方がよく気にされる「汚れや輪染みの染み込みやすさ」。
昨今のワークトップはいづれの商品を選んでいただいても標準的な規格での変色や変質がほとんどない素材になっています。
傷のつきやすさ・目立ちやすさ
しかしながら人造大理石もしくはステンレストップの場合、コーヒーの輪じみや包丁の擦り傷など、使用している以上傷や汚れはつくものと考えて方が良いです。
その対応策としては、エンボスがついているステンレストップを選定したり、人造大理石の場合には(げき落ちくんのような)メラミンスポンジで擦っていただくと傷汚れが落ちますのできれいに保っていただくことができます。
汚れにくいワークトップは?
ステンレスのワークトップに場合によって汚れ防止のコーティングがかかっている場合があります(クリナップセントロ等)。
汚れ体はつきにくくなっていますが、経年で塗膜は劣化します。また人造大理石には基本的にコーティングという概念はありません。
しかし例えばパナソニックの人造大理石であれば「スゴピカ素材(有機ガラス系)」を練り込んでいますので通常の人造大理石より汚れの着色や水アカ残りが少ないですといったご案内も可能です(Lクラス以上)。
シンクとの相性
ワークトップと合わせて必ず考慮したいのが「シンク・流し台」です。
特に主婦にとって「汚れ」「清掃性」「使い勝手」は重要なポイントで、ワークトップ×シンクという掛け合わせて考える視点が重要となります。
具体的にはステンレストップであればステンレスのシンクとは継ぎ目のない接合ができますし、ステンレスシンクの「2段シンク-シンク内が段がついており作業性に優れる」の恩恵も享受できます。
人造大理石のトップであれば2段シンクの恩恵は受けられませんが、汚れや傷の目立ちにくい人造大理石シンクとのシームレスな接合が可能です。
セラミックやクオーツの場合、どうしてもシンクとの間に隙間ができてしまう点も留意したいところです。
このように、ワークトップ×シンクという掛け合わせて考える視点が重要となります。
標準的なワークトップの種類
前置きが大分長くなりましたが、実際にワークトップの素材について比較してみてゆきましょう。
人造大理石
価格感:
一般的なキッチンのワークトップとして普及しています。デザインについてはものすごくざっくり説明すると、ホワイト、アイボリー、グレー、ブラックもしくはそれらのカラーに粒、ゴマのような粒子の模様が入っているもの(主には傷や汚れの目立ちにくさに貢献)です。
国内システムキッチンではトクラス(旧ヤマハ)が人造大理石の第一人者といった印象です。カラー及びコスト面でのバリエーションが豊かです。通常はカウンターの手前は水返がついていますが、トクラスの場合はフラットも選択できるのですっきりした人造大理石のデザインが特徴です。
似たものに「コーリャン」「テノール(トクラス)」「グラリオ(パナソニック)」とありますがデザイン性を付与しているため通常の人造大理石の倍以上のコストが上乗せされます。*後述
ステンレストップ
価格感:
一般的なキッチンのワークトップとして普及しています。基本グレードの商品は「水返し」があります。ステンレスシンクとシームレスな接合が可能で現在システムキッチンのメリットの一つである「多機能2段シンク」の恩恵が受けられます。
トクラスを除くいづれのシステムキッチンメーカー(リクシルやクリナップ)では中より上のグレードのキッチンにおいて、水返なしのすっきりとしたデザインやバイブレーション等の表面加工(美観と機能性の向上)の選択が可能です。
プローユースな表情と清潔感という点において喜ばれるワークトップです。
セラミックトップ
価格感:
近年主流となりつつあるのがセラミックトップです。焼き物であるので硬質な表情と性能、主流となりつつあるココット等の硬く高温の鍋も気にせず置いていただけます。
国内システムキッチンではクリナップ、リクシルの2社が取扱を行っており、セラミックの”表情”についてでは自社で開発まで行っているリクシルが頭一つ抜けている印象です。ただしクリナップの場合には「仕口(しくち-板同士が交わる角のこと)」をシームレスに仕上げることができるのがポイントです(=段差ができない)。
シンクはいづれの商品も選べますが、シームレスな接合ができません(隙間、コーキング等の仕上げ)。天板についてもL型などは継ぎ目が専用のコーキング処理となる点に留意したいところです。
メラミントップ
価格感:
セラミックのような柄をはじめ、他の天板材では不可能な木目がらや色とりどりの「有彩色」が採用できることが最大の特徴です。またさらにその色と合わせてキャビネットの色を選定できるのでデザインをおしゃれにまとめることができます。リビングに家具のようなシンボリックなキッチンの設置が可能です。
国内で唯一メラミントップを扱っているのはキッチンハウス、並びに同社ブランドであるグラグテクトです。
クオーツトップ
価格感:
水晶の結晶を練り込んで固めた非常に硬質な天板です。明確な定義がないため”高価な人造大理石”の括りとして扱われる場合もあります。
ものによってはキラキラとした粒子が美しく、硬く吸水率も低いのでその上で直接調理をすることも好まれる素材です。一方で非常に重いので搬入施工に注意が必要なことと、非常に高価なことに留意する必要があります。シームレスな接合もできません。角の欠けには注意が必要です。
主要国内システムキッチンではパナソニック、タカラスタンダードでしか扱っていません。
メーカー特有のワークトップの種類
日本国内では基本的なワークトップのみならずその素材のメリットデメリット、各社差別化を図るためにメーカー特有のワークトップの展開をしているので紹介してみたいと思います。
人造大理石
トクラスーテノール
セラミックトップと人造大理石で悩んでいるときの新しい選択肢
価格感:
人造大理石を基盤としていながら特殊塗装によって耐久性を兼ね備えた、セラミックのような表情のワークトップの展開がトクラス「テノール」です。
セラミックのような表情ながらセラミックトップでは不可能な「シンクとのシームレスな接合」ができるので清掃性の良いワークトップとシンクを享受できますし、人造大理石の傷や汚れの目立ちやすさについてもカバーしているセラミックトップと人造大理石トップで悩んでいるときの新しい選択肢です。
パナソニックーグラリオ
クオーツトップと人造大理石で悩んでいるときの新しい選択肢
価格感:
人造大理石ながら透明感がありクオーツのような「きらめき」と「積層感」を表現している天板はワンランク上の人造大理石です。撥水撥油成分を練り込んでいるので汚れうつりも少なくコーティングとは異なり長期的な清掃性の恩恵が受けられます。
クオーツの高級な存在感を宿したうえで、人造大理石の恩恵(シームレスなシンクとの接合や清掃性)を受けられるのがおすすめのポイントです。
トクラス、パナソニックー透明感のある人造大理石
空間が明るくなるのがメリット
価格感:
同じホワイトの人造大理石でも光の透過率が異なります。
パナソニックのフリントグレージュ、またトクラスで扱っている主要な人造大理石は光の透過率が高く設置した”空間が明るくなった”というお声をいただくことも少なくありません。
TOTOークリスタルカウンター
これに恋した人が選定します。
価格感:
TOTOにしかない薄口の透明感の高いクリスタルのような人造大理石。お値段はしますが、このカウンターに恋をして選定する人もいるとか。材質としては人造大理石のそれですので、比較というよりは本当にこのカウンター材を気に入られての選定が多いようです。
デュポン コーリアン
割高感は否めない。特注柄はクチーナで
価格感:
主要なメーカーのいづれでも扱いのある、正直”高い”という印象のみ先に残る人造大理石です。高い理由としては名前の通りデュポン社のコーリャンというブランドの天板を引っ張ってきているだけですので、余程この柄にこだわりのないお客様以外には少しtoo muchかもしれません。
ちなみにデュポン社からは様々なコーリャンの柄が出ていますが、基本的にはメーカーのラインナップにないコーリャンの柄はシステムキッチンでは取り扱いができません。(どうしても使いたい柄がある場合にはキッチンハウスの特注かクチーナのキッチンがまずエントリーとしての選択肢となります)。
ステンレストップ
クリナップーセントロ
狭いキッチンも美しく使いやすく
価格感:
クリナップはステンレスを専門に扱う会社だけあって、ワークトップへのこだわり、お客様へのバリエーション展開の配慮を重じているようにみうけられます。
上位機種(セントロ)にはなってしまいますが、ドット柄とヘアラインに加えて「サテン(ドッド柄)」「バイブレーション」そしてフラットな仕口のこだわりとさすがです。(コーティングも訴求はされていますが、経年による性能劣化は否めません。)
シームレスなシンクとの接合だけでなく、専用パレットを使用すればシンク箇所がワークトップの延長としても使用できますので、狭いスペース、日本の小ぶりのキッチンのことをデザインお機能に両面から本当に考えていると感じます。
セラミックトップ
リクシル_ラパートトープ
価格感:
リクシルは通常柄のセラミックトップだけでなく、日本の市場調査をもとに自社で独自に開発したセラミックトップが魅力です(さすが前身がINAX。キッチンの古参サンウェーブと合わさりリクシルになってその真価が現れています)。
その第一弾がこの「ラパートトープ」という柄のワークトップ。女性と昨今のリフォーム需要を徹底的に分析して、傷が目立ちにくく、キラキラっとした質感の今までにない「ツヤ感」のあるセラミックトップを開発したそうです。